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【review】「MMAは終わりなき旅」和田竜光が熟練の技で勝利、ストロー級転向へ

2018年7月からONEに参戦している和田は、デメトリウス・ジョンソンを筆頭にONEフライ級のトップ選手たちと凌ぎを削ってきた。今年1月のONE日本大会は契約切れのタイミングと重なったため参戦はできなかったが、今大会でONEと再契約&復帰戦のリングに立った。

対戦相手のウェイも和田とほぼ同時期の2019年からONEに参戦し、和田と同じく約1年のブランクを経ての復帰戦となる。直近2試合はリース・マクラーレンと若松佑弥に連敗しているものの、和田も「負けた試合でもいいところなく負けているわけじゃなくて、実力がある選手。強いことは分かっていたので警戒していた」と実力を認める強敵だ。

約1年4カ月ぶりの試合ということもあって、ブランクが不安視された和田だが「期間は空いたんですけど、集中して練習が出来ていたので、対戦相手のシェ・ウェイに向き合うことができた」と試合が進むにつれてペースを掴み、1R終盤には首相撲からの足払いでテイクダウンを奪って、ラウンド終了を迎えた。

和田は事前に試合のプランを細かく決めすぎず、実際に対戦相手とコンタクトするなかで攻略ポイントを見つけていくタイプだ。この試合では1R終盤のテイクダウンの流れから、首相撲と近距離の打撃に活路を見出した。2R以降は和田が首相撲からの打撃を軸にテイクダウンも織り交ぜ、試合をコントロールして勝利を掴んだ。

「もともと自分は試合のプランを立てない方で、自分が出来ることを相手に合わせてやって、それで相手が嫌がることや相手がやりづらいことを見つけていくんですよ。そのためにはスタンド、テイクダウン、グラウンド満遍なく全部できないといけないし、そこで試合を作っていくイメージです。

今回は2Rからこういう感じでやれば問題ないというのが分かって、組んだりテイクダウンも狙えて、ペースは掴めましたね。(首相撲になったのは)あれは僕が前に出る、相手が前に出る。自然と距離が近くなる展開だったので、そこで近距離の打撃をやりました。(首相撲からの足払いは)首相撲で相手の頭を下げると、相手の身体が起きるんですよ。そこで足を払う技です」

大会前のプレビュー記事でも書いた通り、最近は“オタツロック”で知られることも多くなった和田だが、決してグラップリングに特化したスタイルではない。むしろMMAファイターのなかでも多彩な打撃の引き出しを持つ。

この試合で勝負を決めた首相撲は2011年8月にDEEPでDJ.taikiと対戦した際に「首相撲をやられたのがすごく嫌で、これは良い技だから自分がやってみようと思った」ことがきっかけで磨いたもの。またボクシングスキルは以前から高く評価され「僕は近い距離の打撃もできるし、中間距離の打撃もできる。ボクシングには自信を持っていて、自分ではONEでNo.1のボクサーだと思っています」と語っている。

分かりやすい強さが出るような一本・KO勝ちではなかったが、相手と試合展開に合わせて戦い方を選択しながら、最終的に試合を支配する。和田自身が「改めてMMAは経験値だと思います。僕も昔はオラオラで打撃と寝技をやっていた頃もありましたけど、試合で試して改善して…の連続で、今のスキルを創ってきました。MMAのスキルは終わりなき旅だと思います」と言うように、まさにキャリアを重ねたからこそ出来る熟練の技、和田竜光にしかできないMMAを見せての勝利だった。

長年、和田のセコンドを務める釜谷真も「たっちゃん(和田)のMMAファイターとしての完成度や強さが見えた試合だし、まだまだMMAファイターとして伸びしろがある」と試合を振り返る。

「ウェイはスクランブルは強いけど、ポジションを取られると弱いところがあるので、僕はたっちゃんがバックを取ったら一本取ると思っていました。いざ試合が始まるとウェイの(テイクダウンを)スプロールする反応が異常に速かったのですが、たっちゃんは自分のMMAの形が出来ているんで、試合中に相手に合わせて色々と戦い方を変えられるんですよ。それで今回は首相撲やクリンチの攻防が多くなった感じですね。

(首相撲からのパンチやヒジについて)実は試合が終わった後、たっちゃんは『俺、こんなにヒジ出るんですね』って自分でも驚いていて。僕も経験があるんですけど、柔術の練習をやり出したらパウンドが上手くなったんです。ようはベースの技術がよくなると使える技が増える。たっちゃんは首相撲の作りが上手いから、あとはヒジを振れば当たるんだと思います。今回の試合でたっちゃんのMMAファイターとしての完成度や強さが見えた試合だし、まだまだMMAファイターとして伸びしろがあると思いますね」

試合後に和田はストロー級への転向を示唆した。その理由はフライ級にとどまるよりも、ストロー級の方がベルトに近づくチャンスがあると見ているからだ。

「フライ級ではDJ(デメトリウス・ジョンソン)ともやったし、フライ級でベルトを狙うとなった場合、DJが頻繁に試合をするわけではないと思うので、いつ挑戦できるか分からないじゃないですか。でもストロー級は8月にジャレッド・ブルックスとグスタボ・バラルトの暫定王座戦が組まれているし、しっかり勝っていけばベルトまでたどり着けると思うんですよ。ONEのストロー級でベルトを獲って、自分がやってきたことを形に残したいし、ごちゃごちゃ言っている世間を黙らせたいです(笑)」

ONEストロー級は同大会で箕輪ひろばがジェレミー・ミアドに勝利し、8月大会で山北渓人と猿田洋祐の日本人対決が組まれ、日本人の選手も厚い階級でもある。その戦いに和田が入ってくることになれば、この階級での戦いがさらに魅力的なものになるに違いない。そして和田にとってはこれまで培った技術・戦術でベルトまでたどり着けるかどうかの新たな戦いの始まりでもある。和田竜光のMMAは終わりなき旅の途中だ。

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